特別受益はよく注意しないとダメ!

特別受益はよく注意しないとダメ!
何が受益となって、誰が対象か!

特別受益で後悔しないためにすること
孫への贈与が特別受益となってしまう事例が。

特別受益は、わかりやすく言うと、相続人への財産(遺産)の前渡しとなり、形が違う生前贈与です。そして相続税では3年以内の贈与分までが含める範囲ですが、遺産分割においての判例・実務では、相続人に対する贈与の場合は、贈与の時期に関係なく、遺産分割の対象財産(遺留分算定の基礎となる財産)に加算していました。
しかし、この判例の考え方では、相続人に対する贈与で、あまり昔の贈与まで持ち戻して計算するとなると、相続開始時に遺産が債務超過であっても、昔の贈与を加えることで計算上資産超過となる可能性、立証の実効性という意味において妥当でない等の批判もあったようです。
そこで民法改正では、相続人に対する贈与について、相続開始前10年間に行われたものだけを算定の基礎となる財産に加えることが定められます。
それでも、遺産分割の協議中に突然に昔の話が出ると、一番の揉める原因です。
でも原則、相続人ではない被相続人の孫への贈与は特別受益には該当しません。
しかし被相続人の子(相続人)が「相続の開始以前に死亡等していた場合」には、その者の子が代襲相続人として相続人となります。この場合、孫が相続人となりますので、この孫への贈与は特別受益となる可能性があります。

これが特別受益となるか否か?
孫の学費については祖母がずっと支払っている。
原則、特別受益になりませんが例外はあります。孫が親の代襲相続人となった場合のほか、養子縁組により被相続人の子となっていれば、この日以降の孫への贈与は、特別受益となる可能性があります。また扶養義務以上の財産上の給付の場合には、その給付は特別受益とされる可能性があります。また子供2人の一方の子(孫)だけに援助した後に相続が発生すると、相続人である子供が互いに揉める原因ともなりえます。
結婚にあたり親から300万円の持参金をもらった。
特別受益になります。結婚の際の持参金や嫁入り道具など、故人から受けていた贈与は特別受益に含まれます。ただし、少額の場合で扶養の一部と認められる場合(高校生の子が結婚する等)は特別受益とはいえない場合もあります。
結婚にあたり親が300万円の挙式費用を払った。
一般的には特別受益になりません。背景としては従前、結婚式は家が主催し家が客を招待するもの(家督相続より)であり、主催者である家(親)が費用を負担するのは当然と考えられてきました。ただ現代では挙式も人それぞれです。兄はあまり挙式費用をかけず親の援助も少額であったのに、弟は豪華な結婚式を行うため、親も多額の援助をしていたという場合でも、特別受益ではないと言い切れるか、疑問の余地があるように思われます。
親から住宅取得等資金の贈与を受けていた。
特別受益になります。生計の資本としての贈与は金銭だけでなく、土地や建物の贈与も特別受益に当たりえます。また贈与税の非課税との関係では、父母や祖父母など直系尊属からの住宅取得等資金の非課税限度額は3,000万円(2020年3月31日までの省エネ等住宅)です。贈与税は非課税でも、相続発生時は特別受益となり、すでに使ってしまった3,000万円も遺産分割の対象とされるでしょう。なお、過去の現金や預貯金などの生前贈与は、現在の貨幣価値に置き換えて評価替えすることが普通です。
父名義の土地に長男は無償で自宅を建てて住んでいた。
特別受益の可能性があります。本例では、被相続人から相続人の1人に対して、土地に使用借権が設定されたと考え、その相当額が特別受益であると評価される可能性があります。使用借権は無償の使用収益であり、借地借家法の借地権と異なり、第三者への対抗力や、解除の制限などがありませんが、他人所有の建物が建っていると土地の売却が困難となり、土地の価格が減価評価されます。この減価分を使用借権相当額として、その者の取得した特別受益と評価される可能性があります。なお地代相当額では特別受益とは認められないことが通常です。
兄弟のうち弟だけが私立医大を卒業して医者となった。
ケースによってはどちらとも言えません。具体的には、相続人間の公平という観点から、被相続人の生前の資産、収入、家庭状況等から総合的に判断されることとなるでしょう。例えば、高校卒業までの学費は扶養の範囲内として、通常は特別受益の対象とは考えられていません。もし兄が定時制高校のみだったのに、弟だけ私立医大に行かせてもらったとしたら、その学費は特別受益に含まれる余地はありそうですが、代々、医者の家系で兄が自分の都合で進学しなかったとしたら、特別受益とされない判断があるかもしれません。
兄弟の一人は親が死ぬまで同居した。
一般的には特別受益になりません。単純に親(被相続人)と同居していた場合、通常は親の財産の減少がなく、特別受益があるとは考えられません。特に同居中、親を療養看護していた場合など、相続人が利益を得ていたとも考えられず、この点からも特別受益とは考えられません。なお、親と同居せずに単に使用していた場合には、使用借権相当額の特別受益が認められる場合はありえます。
長男の嫁に義母は毎年110万円贈与している。
特別受益の可能性があります。原則では、相続人ではない嫁への贈与は特別受益とはなりません。しかし通常、配偶者の一方に贈与がなされれば、他の配偶者もこれにより多かれ少なかれ利益を受けるのであり、実質的には直接の贈与を受けたのと異なりません。最終的には、贈与の趣旨が相続人に利益を与えることに目的があったかで判断されるでしょう。
兄弟の一人だけが父親の3億円の生命保険を受け取った。
ケースによってはどちらとも言えません。被相続人の生命保険金で受取人が指定されている生命保険金請求権は、保険契約に基づく受取人固有の財産であると考えられ、特別受益にはあたらないのが原則です。しかし、共同相続人の1人だけが生命保険金を受け、しかも不公平と見られるほどに高額の場合、特別受益に準じて持ち戻しの対象になるとされています。例えば他の相続財産が何もないのに、死亡保険金のみ多額の金額だった場合、それを受け取った者には特別受益があると言えるでしょう。
妻が夫の死亡退職金を受け取った。
一般的には特別受益になりません。勤務先の会社等から支給される死亡退職金は、会社の就業規則・労働協約の定めによって支給されるものです。公務員の場合は、法律や条例で定められています。死亡退職金等の遺族給付は、受給権者の生活保障を目的とした制度により支出されたものであることを考慮して、原則として、持戻しの対象とするべきではないと考えられています。


特別受益の立証は困難であることが。

特別受益を評価して持ち戻し計算をするためには、法定相続人のうちの誰かが特別受益の主張をしなければなりません。一方、実際にどこまで立証できるのかという問題があります。
不動産や現金預貯金、贈与された時期も相当古いケースもあります。不動産なら登記などで比較的贈与の事実の証明がしやすいですが、現金や預貯金などは立証する資料が残っていないことが多いです。また、受益者が特別受益を認めなかったり、認めたとしても財産評価方法などについて争いがあったりすると、遺産分割の合意ができません。
また遺産分割協議中、共同相続人から、相続分がないことの証明書(特別受益証明書)の作成を求められた場合は、自分が過去に被相続人から受けていた(だろう)受益が、本当に特別受益に当たるか、よく検討してから対応する必要があります。
一方で特別受益を考慮せずに遺産を分配しても、特別受益者以外の共同相続人が納得すれば、遺産分割は成立します。

改正相続法で持ち戻し免除の推定

持ち戻しとは、税制では相続前3年分の贈与を相続税の対象とし、遺産分割では期間の制限がなく、無期限にさかのぼって相続財産に加えることです。
2019年7月1日の改正相続法では、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたとき、持戻しを免除する意思表示があったものと推定するとの規定が設けられました(ただし遺贈又は贈与の実際の行為が必要。)。

 → 法務省HP 長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等について

社会の高齢化により相続開始時における配偶者の年齢も高齢化しているため、その保護の必要性、生活の配慮等の観点から、配偶者の居住の権利を保護するための方策です。

民法と相続税法とでは特別受益の扱いが異なるので注意!

民法上の特別受益の対象になるのは、法定相続人のみです。法定相続人以外の人が生前贈与を受けていたり遺言によって遺贈を受けていたりしていても、特別受益にはなりません。
税法上の「相続開始前3年以内の贈与財産」では、相続人以外への贈与も特別受益に含まれます。つまり、相続開始時の相続財産と、亡くなる3年以内に生前贈与していたすべての金額の合計額が、正味の遺産総額として扱われるのです。
 

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