遺言書は専門家と話さないとダメ!

遺言書は専門家と話さないとダメ!
こんな遺言書で効力はあるか?

間違いない遺言書とするために
遺言書を作る方は増えています。

「遺言は死ぬ前に書くものだから、自分は関係がない。」そう考える方は多いと思いますが、遺言は身近なものになってきています。
公正証書遺言の作成件数は平成26年に10万件を超えました。自筆証書遺言の作成数は不明ですが、家庭裁判所の検認数は年1万7千件超です。平成29年の総数は127,585件で、無くなった方の約1割という計算です。未検認の自筆証書遺言もあるでしょうから、作成している方はもっと多くなるでしょう。

相続と遺言の推移
(平成29年度司法統計年報 3 家事編)

ご自身が生涯をかけて築いた財産です。最終的に自分の想いで財産の配分方法を決めたい場合、遺留分を侵害しない範囲において、遺言者自身の意思での配分が遺言で可能です。
遺言については、公正証書遺言の割合は高くなっておりますが、やはり安価で手軽に作成できる自筆証書遺言は常に一定の方が作成されているようです。
ただし、自筆証書遺言では、行政書士などの専門家とよく相談して作成しないと、せっかくの想いが無効となってしまいます。

この自筆証書遺言に問題はアリ?
私が所有する仙台市青葉区○町3-8の自宅は、長男へ相続させます。
問題がある遺言です。不動産の特定は、登記簿謄本の地番と家屋番号で書かないといけません。分譲地の新築販売など、お隣と同じ住所も世の中にはありえます。遺言書の不動産は、住所ではなく不動産登記簿で記載します。
私が所有する仙台市青葉区△町3丁目556番地の土地は、長男〇へ相続させます。
問題がある遺言です。土地は地番で特定しましたが、土地の上の建物のことが明確ではありません。もし建物があれば、残念ながらこの書き方では、土地の相続登記はできても建物の相続登記をすることはできません。建物は改めて遺産分割協議が必要となってしまいます。
私が所有する自宅(仙台市青葉区□町3丁目556番地の土地と建物)は、長男〇に託します。
問題がある遺言です。土地と建物の表記は正しいのですが、「託す」というのは、物をあげたり相続させるような意味合いではありません。「託す」という表現では相続登記に使うことができません。アパートなどで「管理させる」としても同じです。
私が所有する自宅(仙台市青葉区×町3丁目556番地の土地と建物)は、長男〇と次男△の二人に相続させます。
問題がある遺言です。長男と次男へ相続させたいという意思は伝わりますが、どれくらいの割合で相続させるのか書かれていません。民法の推定により、各自2分の1の登記をすれば差し支えないものと思われますが、揉める可能性があると言えます。
私が所有する自宅(仙台市青葉区×町3丁目556番地の土地と建物)は、長男〇に遺贈します。
問題がある遺言です。「相続させる」と「遺贈する」は明確に扱いが違います。「相続」であれば、指定された法定相続人が単独で登記申請できますが、「遺贈」と書いてしまった場合、相続登記ではなく遺贈登記となってしまいます。原則として相続人全員が登記義務者となり、もし誰かが協力を拒むと、登記できなくなります。
自筆証書遺言が5ページになったが、契印(割印)を忘れた。
問題となる可能性があります。自筆証書遺言は民法上「押印」しなければいけませんが、「契印」については何ら触れられておらず、その数葉が一通の遺言書として作成されたものと確認されれば、契印や編てつが無いとしても、直ちに無効にはならないと考えられます。しかしながら、遺言の効力に問題が生じた場合、相続人間のトラブルに発展する可能性があります。実務上は契印をお勧めします。
自筆証書遺言の押印は「指印」とした。
問題となる可能性があります。自筆証書遺言への押印は、実印でなくても構いません。いわゆる認印でもよく、さらに、最高裁判所の見解によると、拇印・指印でも遺言書は有効とはされています。しかし、拇印や指印は得策とは言えません。遺言の有効無効が争われたときに、遺言者本人の拇印・指印であることの証明が極めて難しいからです。できれば印鑑証明書との照合が可能な実印とし、押印を通しての遺言の効力に関する争いを回避するのが得策でしょう。
脳梗塞を患い手足に震えがあるため、妻の補助(添え手) を受けて自筆証書遺言を作成した。
個別の判断によります。財産目録については、パソコン作成や預貯金の通帳や不動産の登記簿謄本のコピー添付で構いませんが、遺言の全文、日付および氏名は基本的に全て自書です。しかし、遺言者自身が筆記し、他人の補助(添え手) を受けていた場合、添え手をした他人の意思が介入した形跡がなく、筆跡のうえで判定できる場合は「自書」の要件を充たすとされた判例があります。最終的に、自筆証書遺言の「自書」の要件を充たすかで判断されます。
仏壇から遺言書を見つけたので、中身を知るためその場で開封した。
問題がある遺言です。遺言書を発見すると、つい中身が気になって開けてしまうかもしれませんが、たとえ自分の親の遺言でも、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に申立て、検認の手続きを行わないと5万円以下の過料に課せられます。何より、後日に紛争となった時、偽造・変造などの疑いをかけられるかもしれません。検認をせずに開封してしまっても、検認はしましょう。裁判所は開封された状態でも検認してくれます。なお、裁判所によっては順番待ち、又は書類の不備で手続きが終了するまでに相当の期間がかかりますので、早めの手続きが費用です。また、検認は、その内容の有効・無効を判断するものではありません。
遺産分割協議が終わった後で、家の中から自筆の遺言書が見つかったが、中身は終わった遺産分割協議とは違った。
個別の判断によります。遺言の存在を知らずになされた遺産分割協議は、錯誤による無効とされた判例があります。すなわち、分割協議では遺言と異なる分割をしても差し支えないが、遺言があれば協議はその内容にも左右されるはずです。遺言の内容が相当具体的に分割の方法を示していれば、遺言が無いと思ってなされた分割協議は無効にされても致し方ないという考え方です。遺言は本人の想いを伝えたものですが、同時に相続人のために作るものでもあります。相続人の立場にたって、内容を具体的に書き、遺言の存在を明らかにします。


課題の多かった自筆証書遺言でしたが…。

とかく自筆証書遺言書は記載の不備とともに、自宅での保管が多く、検認の手間、紛失等の課題がありました。また相続人による遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われるおそれもありました。そのため、相続をめぐる紛争も多々ありました。

こうした課題に対応するため「法務局で遺言書を保管する制度」が創設されます。

 → 法務省HP 法務局における遺言書の保管等に関する法律の概要

① まず遺言書の保管を申請します
 対象は、法務省令で定める様式(別途定めるられる予定です)で作成された自筆証書遺言に係る遺言書です。保管の申請は、遺言者の住所地・本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局にします。そして遺言者が「自ら」法務局に足を運ぶ必要があります。
② 遺言書保管官※による遺言書の保管
 申請がされた遺言書は、遺言書保管所の施設内において原本が保管されます。併せて、その画像情報等の遺言書に係る情報を管理します。
 ※ 法務局のうち法務大臣の指定する法務局(遺言書保管所)において、遺言書保管官として指定された法務事務官。
③ 遺言者の遺言書の閲覧、保管の申請の撤回
 遺言者は、いつでも遺言書の閲覧を請求できます。また遺言書の保管の申請の撤回もできます。ただし遺言者が「自ら」法務局に出頭する必要があります。申請が撤回されると、遺言書は返還され、遺言書に係る情報も消去されます。なお遺言者の生存中は、遺言者以外の方は、遺言書の閲覧等はできません。
④ 遺言書の保管の有無の照会および相続人等による証明書の請求など
 特定の死亡している者について、自己(請求者)が相続人、受遺者等となっている遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付請求ができます。また遺言者の相続人等は、遺言者の死亡後、遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求および遺言書原本の閲覧請求ができます。
⑤ 遺言書を保管している旨の相続人等への通知
 遺言書保管官は、遺言書情報証明書を交付しまたは相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは、速やかに、当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人等に通知します。
⑥ 遺言書の検認の適用除外
 保管されている遺言書の検認は不要です。

遺言書保管制度のデメリット

今の段階で、この制度には次のデメリットがあると考えられます。
・必ず本人が法務局に出頭しなければならない。
・遺言の内容については審査されない(日付の記載、氏名の記載など形式面のみが審査対象。)ので、結果的に問題(トラブルの種)を含んだ遺言書が作られてしまう。

やはり遺言という事の性質上、厳格な本人確認が求められますので、代理人による方法は今のところ認められておりません。そのため、ご病気などの事情で法務局に出頭ができない場合は、この制度の利用はできません。
そのほか、代替の制度が用意されていないので、保管後に撤回したくなった時、出頭できなくなっていた…そんな事情もあるかもしれません。
 

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