問題がある遺言です。
不動産の特定は、登記簿謄本の地番と家屋番号で書かないといけません。分譲地の新築販売など、お隣と同じ住所ということも、世の中にはありえます。遺言書の不動産は、住所ではなく不動産登記簿で記載します。
作品一覧
私が所有する仙台市青葉区△町3丁目556番地の土地は、長男〇へ相続させます。
問題がある遺言です。
土地は地番で特定しましたが、土地の上の建物のことが明確ではありません。もし建物があれば、残念ながらこの書き方では、土地の相続登記はできても建物の相続登記をすることはできません。改めて建物について、遺産分割協議が必要となってしまいます。
私が所有する自宅(仙台市青葉区□町3丁目556番地の土地と建物)は、長男〇に託します。
問題がある遺言です。
土地と建物の表記は正しいのですが、「託す」というのは、物をあげたり相続させるような意味合いではありません。「託す」という表現では相続登記に使うことができません。アパートなどで「管理させる」としても同じです。
私が所有する自宅(仙台市青葉区×町3丁目556番地の土地と建物)は、長男〇と次男△の二人に相続させます。
問題がある遺言です。
長男と次男へ相続させたいという意思は伝わりますが、どれくらいの割合で相続させるのか書かれていません。民法の推定により、各自2分の1の登記をすれば差し支えないものと思われますが、揉める可能性があると言えます。
私が所有する自宅(仙台市青葉区×町3丁目556番地の土地と建物)は、長男〇に遺贈します。
問題がある遺言です。
「相続させる」と「遺贈する」は明確に扱いが違います。「相続」であれば、指定された法定相続人が単独で登記申請できますが、「遺贈」と書いてしまった場合、相続登記ではなく遺贈登記となってしまいます。原則として相続人全員が登記義務者となりますので、もし誰かが協力を拒むと、登記できなくなります。
自筆証書遺言が5ページになったが、契印(割印)を忘れた。
問題がある遺言です。
自筆証書遺言は民法上「押印」しなければいけませんが、「契印」については何ら触れられておらず、その数葉が一通の遺言書として作成されたものと確認されれば、契印や編てつが無いとしても、直ちに無効にはならないと考えられます。しかしながら、遺言の効力に問題が生じた場合、相続人間のトラブルに発展する可能性があります。実務上は契印することをお勧めします。
自筆証書遺言の押印は「指印」とした。
問題がある遺言です。
自筆証書遺言への押印は、実印でなくても構いません。いわゆる認印でもよく、さらに、最高裁判所の見解によると、拇印・指印でも遺言書は有効とはされています。しかし、拇印や指印は得策とは言えません。万一、遺言の有効・無効が争われたときに、遺言者本人の拇印・指印であることの証明が極めて難しいからです。できれば印鑑証明書との照合が可能な実印とし、押印を通しての遺言の効力に関する争いを回避するのが得策でしょう。
脳梗塞を患い手足に震えがあるため、妻の補助(添え手) を受けて自筆証書遺言を作成した。
個別の判断によります。
財産目録については、パソコン作成や預貯金の通帳や不動産の登記簿謄本のコピー添付で構いませんが、遺言の全文、日付および氏名は基本的に全て自書です。しかし、遺言者自身が筆記し、他人の補助(添え手)
を受けていた場合、添え手をした他人の意思が介入した形跡がなく、筆跡のうえで判定できる場合は「自書」の要件を充たすとされた判例があります。最終的に、自筆証書遺言の「自書」の要件を充たすかで判断されます。
仏壇から遺言書を見つけたので、中身を知るためその場で開封した。
問題がある遺言です。
遺言書を発見すると、つい中身が気になって開けてしまうかもしれませんが、たとえ自分の親の遺言でも、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所に申立て、検認の手続きを行わないと5万円以下の過料に課せられます。何より、後日に紛争となった時、偽造・変造などの疑いをかけられるかもしれません。検認をせずに開封してしまっても、検認はしましょう。裁判所は開封された状態でも検認してくれます。なお、裁判所によっては順番待ち、又は書類の不備で手続きが終了するまでに相当の期間がかかりますので、早めの手続きが費用です。また、検認は、その内容の有効・無効を判断するものではありません。
遺産分割協議が終わった後で、家の中から自筆の遺言書が見つかったが、中身は終わった遺産分割協議とは違った。
個別の判断によります。
遺言の存在を知らずになされた遺産分割協議は、錯誤による無効とされた判例があります。すなわち、分割協議では遺言と異なる分割をしても差し支えないが、遺言があれば協議はその内容にも左右されるはずです。遺言の内容が相当具体的に分割の方法を示していれば、遺言が無いと思ってなされた分割協議は無効にされても致し方ないという考え方です。遺言は本人の想いを伝えたものですが、同時に相続人のために作るものでもあります。相続人の立場にたって、内容を具体的に書き、遺言の存在を明らかにします。