敷金診断士の今後で思うこと(改正民法)

私は敷金診断士とあわせて敷金にかかる不動産ADR調停人候補者資格を有しています。そもそも敷金とは、賃借人の賃料債務などを担保するために賃借人が賃貸人に交付する金銭で、保証金、敷引金等の名称は問いませんでした。改正民法622条の2第1項において、敷金は「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されるようです。
そして「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省住宅局)で運用されていたものが、改正民法621条ただし書きで、敷金から差し引くことができる原状回復費用は、賃借人に責任がある範囲のみの損傷と明確になります(特約で通常損耗等を賃借人に負担させることはできる。)。
さらに改正民法622条の2第1項1号は、過去の判例(敷金返還請求権は、賃貸借終了後家屋明渡完了の時に発生)を踏まえて、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に敷金が発生することはっきりし、よく試験問題で出題されましたが、賃借人に対する敷金返還債務と賃貸人に対する賃借物の明渡債務とは、特約のない限り同時履行の関係に立たない(賃借人は先に明け渡さないと敷金を返してもらえない)ことが明らかになりました。まだまだ敷金診断士や不動産ADRの相談の出番はありそう。

2019年07月14日