AFPの民事信託研修に参加して

当事務所は遺言・相続のご相談の際には、AFPの視点で相続税・資産運用を含めて、相談者の将来のキャッシュフローを念頭に置いた対応となることを心がけております。
昨日、近年いろいろ話題性のある民事信託(家族間契約が主流なので家族信託と呼ぶことが多い)について、民事信託のAFP研修に参加してまいりました。
信託の特徴
・自己の名義でないまま受益権を有する自益信託としながら、かつ、死亡後の相続税を回避する。信託財産は「信託目録」と「信託条項」を登記し、信託契約の時点で委託者の固有相続財産ではなくなります。
家督相続の実現
・自分の財産を直系血族以外に相続させたくないというニーズには、信託契約で「家督相続」を実現させることも可能。(いわゆる家族信託を使った家督承継)
・信託契約内容を「受益者が死亡した際にその受益権は消滅し、次順位の受益者が新たな受益権を取得する」という「受益者連続型信託」にしておけば(受益者(委託者)死亡時の二次受益者への受益権移動に係る遺留分対策は必要)、二次受益者の死亡以後の受益権の移動については遺留分が発生せず、実質的な家督相続が実現する。
信託と遺言の優先性について、
①遺言を作成した後に信託契約を結ぶケース
民法1023条(遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合には、遺言を撤回したものとみなす)より、その抵触した部分は撤回したものとみなされる。ただし遺留分の問題は残る。
②信託契約後に遺言を作成したケース
信託をした時点でその財産の名義は受託者になるので、信託された財産については委託者の固有相続財産ではなくなる。そのため、その後に委託者が信託契約後に遺言書を作っても、信託された財産については効力が及ばない。だだし受益権は相続の対象となる。
なお、信託法90条では、委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託等においては、委託者は、「受益者を変更する権利を有する」としており、遺言書によってこの権利を行使したと解釈される余地が残る。
よって、家族信託契約後に遺言書を作成する場合、遺言書は帰属権利者や後継受益者の変更を指示するものではないことを明示するなど、疑義が生じる余地を防ぐ必要があるかもしれない。
以上、とりとめのない雑感となってしまいましたが、信託法は民法の特別法にあたるため、民法と同じ内容について違う規定がある場合、信託法が優先されるということです。
つまり、民法の規定ではできなかったことが、信託という方法で実現できるということに、現段階ではなっています。しかしまだ判例が確立しておらず、民法と信託法との関係については、裁判の行方にも注視すべき点は多々ありますが…。(あわせて、信託契約は租税回避であるとしていろいろ狙われていますし。)
それでも、行政書士の相続業務は、民法論だけでは片付かない多様なテーマがありましょうから、この信託契約についても練度を深めていかなければと思い直した次第です。

 

2020年02月12日